1971年のデビュー以来、50年間に渡りシンガーソングライターとして多くの作品を生み出してきた小椋佳は、2021年開催コンサートツアーの終了をもって自らの音楽活動に終止符を打つと発表した。
この度ステレオサウンドでは、本格オーディオシステムで聴き入りたいと願う小椋佳の録音作品の中から選曲・構成したLP 盤(10曲収録)と、シングルレイヤーSACD+CD 二枚組(各15曲収録)を、愛好家諸兄にお届けすることになりました。
収録曲は、小椋佳セルフカバー曲集LP盤「彩影」(1987年発売)の中から7曲。1976年NHKホールで小椋佳初のコンサートを収録したLP盤「遠ざかる風景」(同年発売)の中から小椋佳の持ち歌を7曲。そして、2012年の正月超大作映画の為に制作した作品「眦」を合わせた全15曲を選曲・構成したものです。
今回の制作にあたって、LP、SACD、CD 全てのベースとなるマスタリング音源を仕上げるため、先ずはアナログ・マスターテープがミキサーズラボの所有する東京・南青山の「ワーナーミュージック・マスタリング」スタジオへ持ち込まれました。マスターテープは、チーフ・マスタリングエンジニア菊地功の手によって厳密な調整が施されたスチューダーA80テープレコーダーで再生され、その音声信号はダイレクトにMerging Technologies社のPyramixとともにHORUSでA/D変換。その際、小椋佳の声質を最大限に生々しく聴かせるサウンドフォーマットを探る試聴を繰り返し、結果PCM384kHz/32bit音源をメインマスターとして以降のマスタリング作業を行なうこととなりました。
SACD音源の制作は、マスタリングを施したPCM384kHz/32bit音源を用い、HORUSでD/A変換後、同社HAPIでDSD2.8MHzにA/D変換。一方CD音源は、HORUSでD/A変換、Prism Media Products社のSADiE5でPCM44.1kHz/16bitにA/D変換を行なっています。
また、15曲目「眦」は、オリジナルマスターが48kHz/24bit音源であるため、マスタリングのためのPCM384kHz/32bit音源を作る手法として今回採用されたのが、ミキサーズラボ考案の「Lacquer Master Sound」。これはデジタルファイル音源をラッカー盤にカッティングしたのち、そのラッカー盤をレコードプレーヤーで再生して高品位フォーマットにデジタイズする技術です。
ここでもまた菊地エンジニアは、小椋佳の歌う詞のもつ意味を最も強く感じさせる声質となるマスタリングサウンドを実現するための比較試聴を繰り返し制作作業は進められました。
小椋佳の作品世界に特別な想いを馳せた菊地のマスタリングエンジニア魂が、まさに形となって誕生しました。