このレコーディングは僕が最近、ワイン・エキスパートの資格を取得した事に端を発する。ここ数年頼のプロデューサーである鈴木繁氏から吉岡秀晃さんとパット・グリンで、ワインを飲む時のお供になる様なアルバムを作ってみてはどうかと提案があったのだ。
ジャズとワインのマリアージュへの挑戦である。
華やかで豊潤な吉岡さんのピアノはまさに極上のヴィンテージワインを想起させるし、力強いパットのベースはさながらニューワールドのワインの様。僕としてもアサンプラージュのしがいがあるというものだ。ユニット名もワインの神であるバッカスから由来する。
ジャズの録音スタジオとしては都内随一の定評がある、サウンドシティ世田谷でのレコーディングはすこぶるスムーズに進み、日が暮れる頃にはラストテイクを終えることが出来た。(ライナーノーツより抜粋)
[収録曲]
01. The Days Of Wine And Roses
02. Norwegian Wood
03. Milestone
04. Sophisticated Lady
05. Blue In Green
06. Here’s That Rainy Day
07. Alfie
08. What Are You Doing The Rest Of Your Life
09. C Jam Blues
10. These Foolish Things
大坂昌彦 (ds)
吉岡秀晃 (p)
パット・グリン (b)
口開けの曲は勿論、この曲「The Days Of Wine And Roses 」。ヘンリー・マンシーニによる映画音楽であるが、ジャズのスタンダードとしての認識の方が高い曲である。 ビル・エバンスのバージョンでのFからA♭への転調を踏襲したが、オープニングとして雰囲気を与えるためにむしろ、重厚なアレンジを施してみた。
2曲目はビートルズナンバーのジャズ・アレンジで「Norwegian Wood 」。 このテイクではシュワシュワと泡立つ、まるでシャンパーニュの如きシンバルのシズルサウンドを楽しめるよう、通常のドラムスティックではなく、ロッドといわれる竹ひごを纏めたようなものを使ってみた。ビートルズのメンバーもどれほどのシャンパーニュを開けたのだろう。華やかな吉岡さんのピアノサウンドが炸裂している。
続く曲は「Milestone 」。 マイルス・デイヴィスによるこの曲の持つ疾走感は誰が演奏しても失われない。爽やかな白ワインが似合う、スピード感のある演奏が出来たと自負する。 4曲目は「Sophisticated Lady」、エリントンのナンバー。 歌詞に「明日の事も考えず酒を飲み」と出て来るのだが、パットの深淵なベースサウンドは、文豪デュマをして「跪いて飲むべし」と言わしめた白ワイン、Montrachetへの憧憬を誘う。明日を考えずに飲んでみたいものだ。 (ライナーノーツより)