Audiolab Used Restore

フルレストアの記録 『KLIPCSH LS-BB LA SCALA』の場合

 

2008年4月初旬。当店の商品『KLIPCSH LS-BB』のご予約をいただきました。誠にありがとうございます。さっそくレストア作業を開始しました。レストア前の段階で試聴しましたが、特に目立った(耳についた)異常はありません。ただ、やはり酸化によるレスポンスの低下は懸念されますので、今回も徹底的にレストアを行います。ごゆっくりお付き合いください。

 
 

 

1作業前の外観〜分解まで

1.作業前です。なんとも無骨な雰囲気です。真っ黒なフェイスがポイントなのでしょうが、やはり低域用のホーンのとがり具合はなんともいえません。

2.ドライバーの取り付けもこのとおり!業務用ということもあるのでしょうが、すがすがしい気持ちになります。ただ掃除は大変そうですね。

3.これがドライバー。Klipcshブランドですが、おそらくEVのOEMでしょう。

4.まずウーハーを外します。なんとこの機種は底から外すようです。底蓋を外すとこのとおり。

5.逆立ちした状態です。このとおり、ウーハーは後ろ向きについています。

6.内部配線はどうなっているのかな、と思いきや、このように天板に突き抜けてビス止めになっているようでした。この向こう側はドライバーが設置されている場所です。

7.ウーハーが外れました。

8.ウーハーを外した場所はこのようになっています。この中央長方形の穴がロードです。面白いつくりですね。

9.簡単に書くと、音の流れはこんな感じになります。結構長いフロントロードですね。バックロードはよく目にしますが、これだけ伸長のあるフロントロードは初めて見ました。どんな音楽が聞こえるのでしょうか?

10.というわけで、すべてのユニットが外れました。やはりドライバーがあった位置の汚れがとても目立ちます。綺麗にしましょう!


そのルックスが、とても心惹かれるシステムです。特徴的なフロントロード、とても長いホーンなど、作業が楽しくなってきました。早速各ユニットのレストア作業を行います。
 
 
ウーハー レストア作業

1.作業前です。コーンの上に長年蓄積された埃がたまっています。

2.ダンパー、コーン紙はまだまだ現役ですね。やはり外に露出していなかった分、衝撃などの影響はなかったのでしょう。

3.磁気回路内部です。こちらも年代としては比較的綺麗な部類に入るようです。とくに海外スピーカーとしてはかなりよい状態です。

4.フランジもなかなか綺麗ですね。エッジ部分の接着剤が緑色です。なかなかお目にかかりませんのでちょっとびっくりでした。

5.油断していたらもう片方はこのとおり。かなりの酸化でした。丁寧に作業を行いましょう。

6.磁気回路のマグネットとプレート間の隙間もかなりのものです。おそらく製造段階でこのくらいだったとは思いますが、念には念で補強することにします。

9.コーン紙です。綺麗に外すことができました。オーバーホール作業の最大の難関はここですから!



10.比較的深めのコーン紙ですね。ここで表面積を稼ぎ、低域を確保しているのでしょうか?

11.ボイスコイルの巻き幅も深めです。ダンパーも立ち上がっており、このタイプはとても作業が困難を極めます。無事剥離できてよかったです。

12.磁気回路の隙間に接着剤を流し込みました。YAMAHAの某スピーカーのウーハーはこのプレートとマグネットがずれて固着を引き起こすことがあります。念のための補強です。

13.このとおり。隙間は綺麗に埋めました。もう大丈夫です。

14.磁気回路のオーバーホール後の画像を撮影し損ねてしまいました。申し訳ございません。というわけで、すでにコーンも接着済みです。

15.動作調整も完了。ウーハーの全工程が完了です。

16.見た目ではいまひとつわかりませんが、懸念される箇所はすべて対処しています。当分ベストな状態を維持できるでしょう。


ウーハーの作業はすべて完了です。一度組み込むと外観にお目にかかることはまず無いと思います。今のうちに脳裏に焼き付けておこうと思います。
 
 
コンプレッションドライバーのレストア

1.ドライバーの作業です。画像にはツィーターも写っていますが。。。(左端)非常に長いホーンが特徴的です。

2.やはりねじ込み式です。この手はかなり固着して外れないことがあるのですが今回はどうにか外れました。どうしても外れない場合はこのホーンが付いた状態でオーバーホールをしなければならず。。。非常に大変です。安心しました。

3.ホーンに比べるととても小ぶりなユニットです。しかもターミナルにきちんとプラスマイナスが色付けしてあります。海外スピーカーとしてはとてもやさしさあふれるスピーカーですね。

4.クリプッシュエンブレムが素敵ですね。ちょっと古めかしいのですが、どうも心惹かれます。

5.ダイヤフラムが外れました。

6.なんともダイヤフラムのロールとボイスコイルの位置関係がJBLなどとは逆になっています!!形状としてはウェスタンの555Rなどと似ていますね。

7.磁気回路です。ウーハー同様比較的よい状態です。

8.オーバーホール後です。もともとの防錆コーティングを剥離し、あらたな防錆材を塗布しています。

9.やはりターミナル取付ビスの酸化が気になりました。「6.」の画像のとおり、ビスの頭にハンダ付けするという力技なつくりのため取り外しにはひじょうに苦労しました。

10.左が交換する新品、右が古いものです。やはり酸化していますね。ターミナル自体の酸化も気になります。

11.というわけで、すべて念入りにクリーニングしました。これで通電ロスなどもずいぶん軽減されたでしょう。

12.ターミナルすべてをクリーニングし、動作調整の上組み上げました。スイープ(発信機の音)でもわかるすばらしい音色です。なにより、能率のよさが衝撃的でした!

13.左右両チャンネルとも作業を行いドライバーが完成です。


コンプレッションドライバーの作業が完了です。 非常にながいホーンですので取り付けてどんな音色なのか、とても楽しみです。

 
 
ツィーターのレストア

1.作業前です。

2.プラスチックのように見えますが、ホーン部分も金属製で、見た目よりも重量があります。

3.ボトムにはやはりクリプッシュのエンブレム。

4.このツィーターはEVのユニットと同じものです。破壊を前提にしないと磁気回路を露出できません。そのためオーバーホール後は新品のダイヤフラムを使用します。左が新品、右が古いもの。若干色合いが異なりますね。

5.裏から見るとこのような形。

6.構成パーツは上記の3点。

7.磁気回路のオーバーホール完了です。もともとの程度がよかったので比較的短時間で作業完了です。

8.真ん中に吸音材を貼り付けました。あとは組み上げるだけです。

9.動作調整の上、完了です。

10.ツィーターもまた高能率で、すばらしい音色を期待させますね。

ツィーターが完成です。
ユニットの作業はすべて完了しましたので、あと一息です。

 

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クロスオーバーネットワークのレストア

1.作業前のネットワークです。露出された場所に設置されているため、埃や汚れがすごいです。整備性は抜群ですが、どちらがよいやら悩みます。

2.各ターミナルも酸化しているようです。

3.とりあえず外せるものはすべて外して綺麗にしましょう!

4.このとおり。見違えるようです。

5.ターミナルも丁寧にクリーニングします。

6.かなり綺麗になりました。

7.ラグも丁寧にクリーニングします。

8.右のターミナルはビスも交換済み。左は作業前です。残念ながら形状の合うマイナスビスが無かったのでプラスビスです。

9.埃と酸化でこのとおり。

10.クリーニングするとこのとおり。これだけ綺麗になると作業が楽しくなってきます。

11.というわけで、すべての部品を元通りに戻して完成です。ちなみに動作チェックではまったく問題が認められませんでした。部品交換は接点関係だけです。

12.これが作業前。一目瞭然ですね。黒くとそうされたベースにターミナルの銀色がよく映えます。

13.この違いです。

14.もう一方も作業を行い完成です。


クロスオーバーネットワークの作業も完了です。今回は動作に特に問題がありませんでしたので、コンデンサなど、部品交換はしていません。
見た目もさることながら、接点も当分安心してご使用いただけるでしょう。

 
 
エンクロージャー補修〜組み立て

1.汚れが目立ちます。

2.エンクロージャーを通して向こう側が見えるとなにやら不思議な気分です。

3.側面です。当初気づかなかったのですがかなりキズだらけです。

4.ご家庭で使用するので、このキズは何とか目立たなくしたいですね。

5.というわけで、再塗装しました。素地調整し、キズをある程度ぼかした上で、できるだけ薄く塗装しました。

6.キズはほとんどわからなくなりました。

7.黒とそうなので、光を吸い込みます。伝わりにくいですが、かなり綺麗になりました。

8.天板もこのとおり。

9.これ、一応前面です。黒が深まったため、とても写真写りが難しくなってしまいしました。

10.ウーハーを組み込みます。

11.申し訳ございません。作業スペースがかなり狭いので、店頭の廊下を利用しています。ご来店いただいたお客様、ご迷惑をおかけしました。

12.ウーハー〜ネットワークへの中継部分のビスです。やはり酸化が見られますね。新品に交換します。

13.このとおり。よく見えませんが、新品ビスでキラキラしてます。

14.このようにウーハーをとりつけます。当分日の目を見ることは無いけどがんばってもらいましょう!


ようやく全工程が完了しました。大変お待たせいたしました。

 
 
KLIPCSH LS-BB L A SCALA完成品

1.堂々たる風格です。奥行きがあるので、かなり大きく感じます。



2.正面から。やはり低域のとがった部分が特徴的ですね。この中にウーハーがいるわけです。


3.外観もさることながら、その圧倒的な音楽に脱帽です。

4.能率のよさもすばらしいものがあります。

長らくお付き合いいただきありがとうございます。
『LA SCALA』 すばらしいスピーカーです。外観のみならず、飛び出してくる音楽についつい時間を忘れてしまいました。
やはりフロントロードだからでしょうか?バックロードの包み込まれるような低音とは質の異なり、前から満ちてくるような印象を受けました。 そして、前方から飛んでくる高域! とても気持ちのよい音楽です。 なかなか出会うことは無いですが、忘れがたいインパクトを与えてくれたすばらしいスピーカーでした。いつかまた出会いたいと思います。ありがとうございました。

 
 

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