Audiolab Used Restore

フルレストアの記録『ALTEC CRESCENDO』の場合

 

2007年8月、ちょっと時間ができましたので修理待ちの中古スピーカーを修理することにしました。今回選んだのは【ALTEC  CRESCENDO】です。
このスピーカーは、日本のエレクトリ社がALTECの承認を得て製作した日米合作といってもよいスピーカーで、ユニットには、あの『604-8G』が使用されています。もともとCRESCENDOは『605B』が搭載されている機種が多いですが、比較的後期には『604-8G』を搭載したものも多少生産されたらしいです。

今回レストアする商品はエンクロージャーは比較的よい状態ですが、ユニットの高域側が左右どちらも音が出ません。おそらく断線だと思われます。よって新品のダイヤフラムへの交換作業も行います。合せてウーハーもレストアしかつての音を取り戻すことが目的です。

(※この時期はまだすべての工程を画像に残しておりません。途中画像が抜けたりぼやけたような画像もありますがご容赦くださいますようお願い申し上げます。)

 
 

 

2同軸2WAYユニット 【604-8G】 レストア作業

1.ユニットを取り外しました。同軸ユニットかつ真ん中の6セルホーンがアルテック!という主張でしょうか?


2.横から見るとこのようになっています。低域用の磁気回路に穴をあけその後ろに高域用の磁気回路を力技でドッキング!そんな形です。タンノイとはまた違った意味での機能美?を感じさせる力強さです。


3.ピンボケで恐縮ですが、センターのホール側面に錆がくっきりと発生しています。


4.フランジとコーン紙をはずしました。アルテックはコーン紙をフランジから剥離せずとも磁気回路のオーバーホールが可能です。

5.低域側のギャップです。思ったほどひどくはないです。

6.高域側のダイヤフラムカバーです。まるで3重の塔の様です。

7.JBLとちがいダイヤフラムにカバーがついています。これはとても親切設計で、ダイヤフラムを傷つけてしまうリスクがずいぶん減ります。

8.カバーをあけたところです。ボイスコイルから端子までの線材がぽっきり折れています。この時代のALTECは非常にこの症状が多く、たいてい折れているか、折れる寸前です。

9.横から見ると完全に離れていることがわかります。おそらくこの部分にテンションがかかってしまい長い年月をかけて折れるのでしょう。修理で預かるものにも同様の症状やハンダで補修されているものを多数見かけます。音が出ている場合でも安心はできません。

10.ダイヤフラムをはずそうと思ったら??と。なかなか外れません。目いっぱい引っ張ると見事にボイスコイルとボビンがギャップ内に詰まってしまっていました。

11.このとおり!ネックからした、あるべきボイスコイルがありません。ただのお皿ですね!

12.ギャップから救出したボイスコイルはこんな有様でした。コイルは完全に酸化して崩れ落ちています。ここまでひどいものははじめてみました。

13.でも磁気回路は比較的きれいですね。まあ、コイルと比べて、ということですけれども。。。

14.先ほどとは反対側の磁気回路です。ウーハー側ですが、センターホール側面に完全なる錆が!ホーンの奥に見えた錆はこれでした。

15.ターミナルプレートを取り付けているビスもさびています。ターミナルビスの交換もしたいので今回ははずします。

16.ターミナルをはずして取り付けビスを交換しました。これで接触不良の心配はありません。

17.ツィーター側もこのとおり!

18.ピンボケで申し訳ありません。新品のビスへ交換します。

19.メーカー純正の新品ダイヤフラムです。約3万円もします。高価です!!

20.ふるいダイヤフラムの端子はビスで固定するタイプですが新しいものははめ込み式のため、配線を交換する必要があります。この交換キットもメーカー純正なのですが、なんとこれだけで3500円もするのです!!驚きます。

21.交換完了です。

22.オーバーホール後の磁気回路ウーハー側です。きれいになりました。

23.画像を残していないのですが、磁気回路内部にあるダストカバー(ネット)が外れていました。そのままではツィーターがわのギャップへホコリ等が進入し異常音の原因となりますので、今回はこのように透過性の高い生地をウーハー側のセンタホール入り口部分へ貼ることにしました。

画像はところどころなくて、申し訳ございません。この時期はまだ具体的に「フルレストアの記録」を想定しておらず、自分の勉強がてら画像を残しておりました。
その意味でまとまりのある説明とはいきませんが、ダイヤフラムの酸化状態など、なかなか見ることのできない固体だったため、今回アップすることにしました。

 

 

2ユニット以外の作業 

1.これはエンクロージャーについているスピーカーターミナルです。気になるのはこの配線。こんな配線が使われているALTECをはじめてみました。

2.汚れもあります。


3.ということで分解してクリーニングです。もちろんビスも交換します。


4.左右とも完了です。

5.このとおり!きれいになりました。

6.これはネットワークです。コンデンサーなどもとくに異常がなかったのでターミナルビスの交換のみ行いました。

7.ビスをはずしました。ここに使用されいているビスは比較的長いものです。端子もクリーニング済みです。

8.比べると一目瞭然です。ちなみに星型のビスは当店ありませんのでプラスビスに交換します。

9.さて、懸案の配線です。被覆をむいたところかなり酸化していました。ずーっと先までその状態は続いています。

10.ということで配線を交換することにしました。BELDENのClassicです。かつてアメリカスピーカーなどに使用されていたケーブルの復刻ということで、もっとも好ましいと思われます。

11.端末の加工をして、後は組み込むだけです。

12.ユニットを組み込みます。

13.後は内部配線をつなぎ背面バッフル、ネットワークを組み込んで完成です。

 


作業完了です。どんな音楽が聞こえるのでしょうか?

 

完成 『CRESCENDO』

1.完成です。やはりホーンに存在感ありです。

2.ネットをはめるとまた違った趣です。

3.ツィーター側のダイヤフラムが新品のためまだまだですが、徐々に良くなっていくと思います。

 

お付きあいありがとうございます。
ボイスコイルを見たときはびっくりしまいしたがウーハーは特に問題なく、順調に作業を終えることができました。試聴用として頻繁に鳴らしていますのでどんどん良くなっていくでしょう。

毎朝音をだすのが楽しみなスピーカーですね。

TOP  AudioShop  スピーカー修理工房  スピーカー修理事例   お問い合わせ