Audiolab Used Restore

フルレストアの記録 『TANNOY VLZ in Cabinet』の場合 その2

 

2007年11月、【TANNOY VLZ in cabinet】のご予約をいただきました。前回ご購入いただいた3LZとほとんど同時期のご予約でした。誠にありがとうございます。前回の商品とはユニットの形状から異なっておりエンクロージャーの状態はかなり良くないものでした。 お客様にはこの点ご了解いただいた上での販売でしたが、やはり私たちが作業をするからには音はもちろん外観もできる限りきれいに仕上げたいとの思いがあります。丁寧に作業をします!ごゆっくりご覧ください。

 
 

 

作業前のエンクロージャー外観

1.かなり状態はよくありません。天板もよごれと傷と打痕だらけですし、シールのようなものが貼ってあった跡もあります。


2.天板です。クリーニングだけではどうしようもないかもしれません。

3.側面です。天板ほどではないですが、でも傷などが目立ちます。

4.打痕その1です。写真ではわかりにくいですがかなりえぐれています。


5.打痕その2です。何でしょう?なにかぶつけたのでしょうか?点々としていますね。


6.打痕その3です。ここが一番問題です。場所がわかりにくいですが、天板の正面側角です。すごく見えるところです!!


7.悩みの種のネット破れです。このネットは同じものを入手することができません。基本は直せないのでなんとか目立たないようにしたいのですが、、、方法を考えましょう。

8.なぜかこのスピーカーはいたるところに塗料の付着した跡がありました。なぜ??しかも白??という疑問はさておき綺麗に消したいものです。

9.背面バッフルです。こちらは汚れているくらいで特に問題はないようです。ちなみに尻尾のように出ているスピーカー接続ケーブルはお客様のご希望でSHARK(シャーク)製の汎用ターミナルに交換します。
 

前回と一転して、かなり外観に難のある3LZです。持てる技術を注ぎ込み、できるかぎり補修を行いたいと思います。

 

 

デュアルコンセントリックユニット 【Monitor Gold VLZ】 レストア作業

1.作業前です。

2.コーン紙をはずし、ツィーター側のダイヤフラム等もはずしました。いつものタンノイユニットですね。


3.このモデルは磁気回路がフランジから簡単に外れました。せっかくなのではずしてオーバーホールを行いました。フランジがない分作業がやりやすかったです。


4.横からです。防錆処理も行いましたので後は組み立てるだけです。


5.フランジと磁気回路を元に戻しました。


6.ツィーター側もこのとおり。綺麗にオーバーホールを行いました。

7.やりやすさを考えると先にツィーターの調整を行います。

8.ツィーターのダイヤフラムです。


9.ここで一つ問題が!!
ウーハー側のダンパーを固定するボルトの受けが広がっておりテンションがかからない!という事態が発生しました。これではうまく調整ができません。


10.ということで受け側にあたらしいねじ山をきり直し、ちょっと太いボルトに交換します。これで問題なく調整ができます。


11.この後ウーハーの調整にとても手間取りました。なかなか画像では伝わりませんので割愛しますが、センターキャップの不良もあり再接着しました。そのときの写真です。
 

ユニットが完成しました。やはりいつものごとくウーハー側の調整にかなりの時間(約1週間!ホントです!)がかかってしまいました。フィックスドエッジであることがこのユニットの長所でもあるのですが、時に短所でもあるのでしょう。とはいえようやくユニットの完成です。

 

クロスオーバーネットワーク レストア作業

1.ネットワークです。事前のチェックによると電池のように見える緑色のコンデンサが不良でした。同一容量の代替部品に交換します。

2.交換済みです。まったく同一の容量がないため、並列につないで数値をそろえます。

3.近くによって見ました。完成後再度動作チェックを行い、問題のないことを確認して作業完了です。
 
クロスオーバーネットワークの作業が完了です。これはいつもどおりの作業でした。やはりいつもと変わらず今回交換したコンデンサーが不良でした。修理でお預かりする3LZも必ずといっていいほどこのコンデンサが不良なので、部品の特性なのかもしれません。

 

エンクロージャー レストア



1.3LZの場合写真の前面バッフルの取り付けネジがさびて劣化することが良くあります。時として異常音になりますのではネジを新品に交換しました。


2.ネットの破れもできる限り補修しました。裏から接着剤で補強しています。ただ音の通り道ですので音に影響しないように細心の注意が必要でした。

3.かなり目立たなくなりました。これならお客様にもご納得いただけるのでは?


4.拡大写真です。


5.前面バッフルの取り付けネジです。今回はそれほどさびてもいませんが念のため交換しました。

6.天気が良かったので外で作業です。素地調整をするときは屋内だとこなっぽくなってしまい大変なので。


7.画像を残してませんが打痕もすべてパテで補修し、オイルで仕上げます。


8.見違えるようになりました。あとはふき取ってしばらくなじませます。

9.完成が楽しみになってきました。
 
オリジナルの風味をできるだけ壊さないように仕上げを行いました。もともとの状態が良くなかったので、比較すると非常に綺麗に仕上がったと思います。高級スピーカーですので、やはり音だけではなく外観も大切ですよね!

 

完成 【TANNOY VLZ in Cabinet】


1.ようやく完成です。

2.オイルもとてもなじんでなかなかの風合いです。



3.もっとも目立つ打痕のあった場所です。ほとんど見分けがつかなくなった(自己満足ですが。。。)と思います。


4.角の補修箇所です。こちらは地の色が薄いので若干目立つかもしれません。

5.さすがのVLZですね!

6.ネットの破れもこのとおり!注目されなければ大丈夫?だと思います。


7.アッテネータープレートを加工し、汎用ターミナルを取り付けしました。


8.塗料の跡も綺麗になりました。


お付き合い誠にありがとうございます。

今回もとても苦労しました。やはりウレタンのエッジと違い交換できませんので対処療法的に不具合を改善する必要があります。また、タンノイ特有のボルト、ビスで振動系を固定しているがゆえの症状も多々あり、苦労するケースが多いのでしょう。

でも、やはり完成したVLZで聴くバイオリンの音はいろいろな苦労を忘れてしまうほどなのですから、やはりVLZはすばらしいスピーカーですね。

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